決算短信って色々書いてるけど、どこを読めばいいかわからない。
ポイントを教えてほしい。
こんな悩みにお答えしていこうと思います。
私も株式投資を始めたばかりの頃は、決算短信が発表されてもどこをどう読めばいいのかあまりわかりませんでした。
とりあえず売上や利益面のみを見ていたような気がします。
しかし、決算短信には売上や利益以外にもいろんな情報が掲載されており、うまく活用することで会社や市場環境についてより理解を深めることができます。
今回は私が思う「これだけは押さえておくべきポイント」をご紹介しますので、今後の投資活動に役立てていただければ幸いです。
そもそも決算短信って何?
決算短信とは、上場企業が三か月に一度発表している「会社の通知表」のようなものです。
上場企業は投資家にきちんと経営状況を説明するために、年4回決算短信を開示することが義務があります。
決算短信を確認することで
・当初業績予想について進捗はどうか?
・会社としてどんな活動をしてきたのか?
・今の財務状態はどうか?
こんなことを確認することができます。
ちなみに会社によって決算短信の記載方法は若干違いますが、ほとんど似たような内容が書かれていますので、ひとつのパターンで見方を習得すればほかの会社にも応用できますのでご安心ください。
今回は、私の保有銘柄である遠州トラック(9057)の決算短信を例にして説明していきます。
※平成31年3月期 の第3四半期決算短信
株で資産を増やすために決算短信でチェックするべきポイント
①売上、利益
決算短信では色んな情報を得ることができますが、まず確認するべき項目は売上高と利益です。
もし会社が当初開示していた予想より、大きく進捗が遅れているようであれば株価が大きく下落する可能性があるからです。
投資家にとっても一番気になるところですよね。
それでは実際の決算短信を見ていきましょう。
現在の売上と実績は一番上部に記載してあります。
ここでは営業収益と表示されていますが、売上高と同じ意味です。
また利益はいくつか項目がありますが、その中でも営業利益を重要視しています。
なぜなら営業利益とは、「本業で稼いだ利益の金額」を表しているからです。
実際の数字を見てみると、2019年3月期は、
営業収益(売上高) 21,042百万円 前年比11.1%
営業利益 1,180百万円 前年比 1.9%
前年比を見てみると、売上は順調に伸びていますが、営業収益がそこまで伸びてないですよね。
下部に記載している業績予想では、営業利益も+15.3%で着地予想をしているので、本来ならもっと伸びてほしいところです。
とりあえずここでは、「売上は順調だけど、営業利益の伸びがイマイチだな」ぐらいに思っておきます。
②配当金
売上や利益を確認したら、配当金についても忘れずにチェックしましょう。
もし配当金が減少したりすれば、株主から嫌われ株価が大きく下落する可能性もあるからです。
またそれなりの配当金を出している会社であれば、配当利回りが確保されていることで株価が下がるリスクを下げることもできます。
遠州トラックの場合、
30年3月期 20円(一株当たり)
31年3月期 28円(一株当たり)
と増額していることからいい傾向と言えるでしょう。
毎年配当金を増やしているのであれば、増配株として注目される可能性もあります。
②キャッシュフローの状態
キャッシュフローも確認しておくことが大切です。
キャッシュフローとはその名の通り「お金の流れ」のことですが、実際に会社にキャッシュ(現金)が入っているかどうかはとても大切だからです。
見た目利益が出ていても、売掛金が回収できずキャッシュが入ってこなければ、最悪黒字倒産という可能性もあり得ます。
またキャッシュフローは下記の3種類がありますが、
①営業活動によるキャッシュ・フロー
②投資活動によるキャッシュ・フロー
③財務活動によるキャッシュ・フロー
一番大切なことは、①で十分なキャッシュが稼げているかどうかです。
なぜなら①は本業の儲けによって得たキャッシュが表示されているからです。
逆に②は設備投資(攻めの投資)によるキャッシュフローを表しているので、①で十分なキャッシュが稼げているのであれば、マイナスになっていても特段問題はありません。(あまりに過剰な設備投資は問題ですが。
遠州トラックのキャッシュフローを見てみると、
①営業活動によるキャッシュ・フロー +15.96億円
②投資活動によるキャッシュ・フロー -3.97億円
③財務活動によるキャッシュ・フロー) -7.04億円
となっており、本業の儲けにより十分なキャッシュが稼げているので今のところ問題は無さそうですね。
④経営成績に関する概況
決算短信には数値面だけでなく、経営成績に関する概況を説明している欄がありますので、ここも必ず読んでおきましょう。
なぜなら
・業界の経営環境はどうなのか?
・先ほど確認した売上や利益面の数値にどういった経緯で至ったのか?
このようなことがわかるからです。
それでは実際の例を見てみましょう。
少し文章が長いですが、順番にいきます。
わが国経済は、個人消費と設備投資の好調から、緩やかに成長が持続いた しました。物流業界におきましても、消費関連貨物や生活関連貨物は、引き続き好調に推移するものと見込まれる。
引用:https://disclosure.ifis.co.jp/data/disclose/7e/20190129/140120190129465305.pdf
ここから国は緩やかな成長が持続しており、物流業界も活況であることが推測できます。遠州トラックには追い風ですね。
当社グループにおきましては、新たにネット通販の宅配業務に参入したこと、従来から のネット通販向けの物流拠点間輸送も増加したこと、また、夏場に家電品や日用品・衛生用品等生活関連貨物の 取り扱いが好調であったことから、当第3四半期連結累計期間の営業収益(売上高)は210億42百万円(前年同 期比11.1%増)となりました。
引用:https://disclosure.ifis.co.jp/data/disclose/7e/20190129/140120190129465305.pdf
ここから売上が伸びた要因は、
・ネット通販向けの物流拠点間輸送が増加
・夏場に家電品や日用品・衛生用品等生活関連貨物の 取り扱いが好調だった
この2点だとわかります。
利益面におきましては、燃料費の高騰は一段落したものの、主に輸送部門において、労働需給の逼迫により外 注費が上昇したこと、および労働力不足を補うための環境改善に投資したこと等から、営業利益は11億80百万円 (前年同期比1.9%増)、経常利益は11億57百万円(前年同期比3.6%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益 は9億11百万円(前年同期比1.8%減)となりました。
引用:https://disclosure.ifis.co.jp/data/disclose/7e/20190129/140120190129465305.pdf
ここから売上が伸びたにも関わらず、営業利益が伸びなかった要因は、
・労働需給の逼迫により外 注費が上昇した
・労働力不足を補うための環境改善に投資した
上記2点だと書いてあります。
このことから、現時点では人手不足による外注費が改善しないと利益面が伸び悩む収益構造になっているようですね。
また環境改善に投資したとも書いてあるので、このあたりが効いてくると収益面の向上も期待できそうです。
ここまで分析ができたら、あとは自分の判断次第です。
ちなみに私が株主ならホールドを継続すると思います。
なぜなら、
・業界自体が活況であり、今後EC取引が増えてくることが予想されることから、運送業界はますます需要が高まる可能性が高い。※物販に占めるEC取引割合:日本⇒6%、アメリカ⇒10%、中国⇒15%
・遠州トラック自体の売上は順調に伸びている
・利益面は少し不安要素が残るが、「使わざるを得ないビジネス」なので、例えば利益率改善のために運賃の値上げをしても売上はそれほど落ち無さそう。
上記の理由の通りです。(ショボ腕投資家の予想なので、あてにしないでください)
要はいくら決算短信を読み込んだとしても、最終的にその結果を分析し判断を下すのは自分だということです。
そのため、適切な選択ができるように普段から投資の勉強や情報収集をしておくことが大切です。
業績予想を鵜呑みにするのはやめよう
決算短信には期中の業績予想が書いてありますが、この数字を鵜呑みにするのは危険です。
なぜなら実際には無理な数字でも、株価が下落するのを恐れて適切な数字に修正しないことがあるからです。
上場企業なのにそんなことあるの?と思う方もいると思いますが、普通にあります。
そのため途中までの進捗を見て、この業績予想は明らかに無理があると感じたときは一旦売却することをオススメします。
保有中に下方修正が発表された場合、失望売りを招き、大きな損失を被ることがあるからです。
私も三機サービスという銘柄で一旦売却したことで救われました。
こちらが当時の決算短信です。
第三四半期終了時点 業績予想
売上高 前年比+5.3% 前年比+12.1%
営業利益 前年比-20.2% 前年比+12.6%
こう見ると、第三四半期終了時点 と業績予想にはかなりの乖離があります。
感覚的にも明らかに無理そうですよね。
特に営業利益については現時点で前年比でマイナスだし。
ちなみに四半期ごとの数字はこちらです。
売上高(百万円) | 売上高(前年) | 四半期実績 | 四半期実績(前年) | 前年比(累計) | 前年比(四半期) | |
第1Q | 2,662 | 2,125 | 2,662 | 2,125 | 125% | 125% |
第2Q | 5,931 | 5,279 | 3,269 | 3,154 | 112% | 104% |
第3Q | 8,283 | 7,866 | 2,352 | 2,587 | 105% | 91% |
営業利益(百万円) | 営業利益(前年) | 四半期実績 | 四半期実績(前年) | 前年比(累計) | 前年比(四半期) | |
第1Q | 72 | 28 | 72 | 28 | 257% | 257% |
第2Q | 393 | 381 | 321 | 353 | 103% | 91% |
第3Q | 417 | 513 | 24 | 132 | 81% | 18% |
こちらを見ても、期が進むにつれて前年比が悪化していることがわかります。
この状況を見て、私は売却を決意しました。
ちなみにこの銘柄は私が好きなストックビジネスでもあり、今まで業績も堅調に推移していたことから、正直売却するのは勇気がいりました。
もしかしたらやってくれるかもしれない。こんな感情がよぎるんですよね。
その結果がこちらです。
当初業績 修正予想
売上高 前年比+12.1% 前年比-0.9%
営業利益 前年比+12.6% 前年比-16.0%
大きく下方修正。
次期の業績予想も芳しくなかったことから失望売りを招きました。
株価は急落し、私今では1,000円を余裕で割っています。
このように株価が下がるときは一瞬なので、損切りを恐れてズルズル保有していると致命的なダメージを負ってしまう可能性があります。
もし自分がどうしても気になる銘柄だった場合は次の決算内容を確認し、順調に成長していることを確認してから買いを入れても遅くはありません。
今までメチャクチャ信頼していた銘柄でも、普通に裏切られます。
また決算短信は四半期の累計実績しか発表されないので、Excelで四半期ごとの数字を把握しておくのもオススメです。
コメント